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2024年2月28日 (水)

チケット販売に劇団名くらい入れてもらったほうがいいと思う

今度パラドックス定数が上演する「諜報員」ですけど、チケットの売行きはどんなもんだろうかと検索してみました。ぴあで。そうしたら「パラドックス定数」と入力しても引っかからないんですね。「諜報員」だと引っかかるんですけど。

商業演劇はさておき、劇団芝居だと普通は「劇団名『芝居名』」みたいな形で登録されています。だから劇団名で検索すれば引っかかるのに、今回は「芝居名」としか登録されてない(つまり「諜報員」としか登録されていない)ようです。

劇団側の申込時の記入ミスか、ぴあ側の登録時の登録漏れかわかりませんけど、不便ですよね。いまどき貴重な劇団なんですから劇団名も載せるようにしたほうがいいと思います。

で、ここまで書いてひとつ思いつきました。諜報員は身を隠すのが仕事だからチケット販売でも身を隠す、とか狙ってわざと劇団名を載せない形にしたとか。さすがに今時そこまでやるような酔狂はないと思います。単純に観客に対して不便を強いるだけです。流行りません。

暇ネタをしばらく書いていなかったので、ちょうど手頃そうな話題かなと思って取上げました。特に劇団に恨みはありません。いまさら訂正できるものかわかりませんがこんなことも起こりうるから気をつけましょうという話です。

2024年2月27日 (火)

2024年3月4月のメモ

こまばアゴラ劇場閉館にいまさら気が付きました。

・松竹主催「三月大歌舞伎」2024/03/03-03/26@歌舞伎座:昼の部に仁左衛門の出る御浜御殿綱豊卿

・パラドックス定数「諜報員」2024/03/07-03/17@東京芸術劇場シアターイースト:新作は男六人で近代事件のゾルゲ事件が題材と聞けば要注目に決まっている

・パルコ企画製作「リア王」2024/03/08-03/31@東京芸術劇場プレイハウス:段田安則をリア王に他もきっちり集めたキャストで

・東宝製作「千と千尋の神隠し」2024/03/11-03/30@帝国劇場:初演はコロナに祟られたけれど今回は主演を四人に増やして東京の後は国内ツアーとロンドン公演を並行して走らせる結構無茶な企画

・松竹主催「四月大歌舞伎」2024/04/02-04/26@歌舞伎座:夜の部が仁左衛門玉三郎で於染久松色読販と神田祭

・青年団「S高原から」2024/04/05-04/22@こまばアゴラ劇場:こまばアゴラ劇場さよなら公演の1本として

・フジテレビジョン/サンライズプロモーション東京主催製作「GOOD -善き人-」2024/04/06-04/21@世田谷パブリックシアター:長塚圭史演出

・梅田芸術劇場企画制作主催「VIOLET」2024/04/07-04/21@東京芸術劇場プレイハウス:初演がコロナで3日間しか上演できなかったけれど評判がよかった藤田俊太郎演出

・新国立劇場主催「デカローグ1-4」2024/04/13-05/06@新国立劇場小劇場:規模が大きすぎて小川絵梨子と上村聡史が手分けして演出するよくわからない公演

・動物自殺倶楽部「夜会行」2024/04/24-04/28@「劇」小劇場:鵺的で初演した芝居を別ユニットで上演

・青年団「銀河鉄道の夜」2024/04/25-04/29@こまばアゴラ劇場:こちらもこまばアゴラ劇場さよなら公演の1本として2チーム上演

今回は割と公演期間が長めの芝居がみっちりと詰まっています。

KERA CROSS「骨と軽蔑」シアタークリエ

<2024年2月25日(夜)>

どこか西洋風の国。東西に分かれて戦争が続いており、男手はすでに足りなくて女子供まで徴兵されている。その西側で兵器工場を経営する一家。兵器工場の社長である主人は病気で寝たきりとなって女性秘書が何くれとなく世話を焼いている。その妻は完全に夫のことを諦めている。二人の娘は姉が売れない小説家だが徴兵されそうになった夫が行方不明になる。独身の妹は家の手伝いをしながら夫から姉に届く手紙を母と女中と相談して処分している。

どことなく暗い雰囲気の一家と関係者を描く女優ばかり7人の芝居。女中役の犬山イヌコがたまに客席に語り掛けたりして自分がこれまで観たKERA芝居とはやや違う。ただ、気が付いたら終わっていた。それはのめり込んで時間を忘れたのではなく、もうふた波乱くらい来るかなと考えていたところで巻きに入ると宣言されて、さらにそこからが微妙に時間が掛かる。女性秘書が起点になってもう少し一家を引っ掻き回すかなと思っていたけれどそちらの話が少な目。

何となくだけれど、もう少し用意していた話があったのを上演時間の都合で削ったような気がする。休憩を挟んで3時間に収めていたのは観る側としては助かるけれど、「フローズン・ビーチ」なんかは休憩なしの2時間だったからあれと比べるとどうも話の密度が薄く、食い足りなく感じた。

役者で言うと、頭から芝居のリズムをわからせてくれる犬山イヌコがやっぱり得難いところで、峯村リエが後半もう少し出番がほしくて、宮沢りえが出番の割りにもったいなくて、鈴木杏が後半に向かってどんどんよくなって、堀内敬子が地味ながらもおいしいところもある役をきっちりこなして、水川あさみは役どころの割りに出番が少ない。

小池栄子が難しい。かなりいい役を持ち場以上にいい役に仕上げていた。でもあの役はもう少しとんちんかんで不穏な役にもできたんじゃないか、明るく前向きな役に仕上げたばかりに食い足りなさの原因のひとつになっていないか、と疑っている。演出かもしれないけど。

文句なしにすごかったのは舞台で、庭と屋敷の中をプロジェクションマッピングと照明で切替えるけど、どう見ても無茶な美術のはずなのにまったく違和感がない。違和感がなさすぎて芝居中でネタにしていたくらい違和感がない。それはもうさすがとしか言いようがない。これを見たらミュージカルのスクリーンやプロジェクションマッピングですら野暮ったく見える。場面転換の極致みたいなことをやっているのでこれは見てのお楽しみで。

神奈川芸術劇場プロデュース「スプーンフェイス・スタインバーグ(安藤玉恵版)」神奈川芸術劇場大スタジオ

<2024年2月24日(昼)>

自閉症として生まれ、小児癌で7歳にして死に直面している少女であるスプーンフェイスが語る自分の一生と死に臨んでの心構え。

出ずっぱりしゃべりっぱなしの一人芝居でこの日は安藤玉恵。脚本は片桐はいり版と同じで、あまり子供らしくも病人らしくもなくはっきり客席に語り掛ける演出。内面の大人びたところを外に出した役作りというか。人形に話す相手を割当てて進めるところが片桐はいり版にはない工夫。

多少幕の上げ下げを調整するとかマイクを使うとかはあるけどスタッフワークはほぼ同じ。全体にスタッフワークのはまり具合は安藤玉恵版のほうがよくて、こちらを基準に仕立てて片桐はいりもそれに合せたっぽく見えた。

それで仕上がりはというと、これは脚本負け。少女も自閉症もわざわざ見せん、自分流で丸ごと料理してやる、という意気込みはあったのかもしれないけど、重たい話を引受けきれていない。早めの台詞回しと場面ごとの間もあまり取らないのとで話がどんどん流れてしまった。安藤玉恵をもってしてもこれか、と脚本の手強さを再認識。あと15分余分に使ってもう少しゆっくりやってくれと演出で最短上演時間を縛ってもよかったのではないか。

神奈川芸術劇場プロデュース「スプーンフェイス・スタインバーグ(片桐はいり版)」神奈川芸術劇場大スタジオ

<2024年2月22日(夜)>

自閉症として生まれ、小児癌で7歳にして死に直面している少女であるスプーンフェイスが語る自分の一生と死に臨んでの心構え。

出ずっぱりしゃべりっぱなしの一人芝居でこの日は片桐はいり。少女を演じながらいろいろなものや人形を相手にちょこまかと動いているうちになんとなくそれっぽく見えてくる。立てたくなるような台詞がたくさんあるにも関わらずかなり抑えめに進めて、最後に思い切りはじける演出。観客が自閉症の子供を観るような動きや話し方を少し出した役作りというか。

脚本では収容所でも遊んでいた子供の話が出てきて、どうしてもドイツで死の話というとナチスと収容所が出てきやすい。それはしょうがないけど、でもいまはイスラエルとパレスチナの話があって、やられてやり返すにはまあなかなか徹底しているな、みたいな話がある。だからそこがフックにならずにむしろ引いてしまった。上演時期の問題とはいえ不利に働いたのはつらいところ。

仕上がりは、あと少しで傑作に手が届きそうだったけれども手前で届かなかくて惜しい、くらいの出来。父親が酔ってスプーンフェイス相手に嘆く場面と最後にはじける場面がよかった。選曲が何となく合っていないように聞こえたけどこれは後で観た安藤玉恵版と共通で使っていたから。面倒でも選曲は変えたほうがよかったと思う。

この日は片桐はいりに演出の小山ゆうなと芸術監督の長塚圭史の三人でアフタートークがあったのでうろ覚えだけれどメモ。言葉遣いは私の脳内で勝手に変わっているので注意。

長塚:自分も公演中なので観るのが実は今日が初めてです。昔、パルコ劇場で麻生久美子さん朗読を演出したことがあります(2010年4月)。それは2日しか上演しなかったけれど頭の片隅に引っかかっていて、今回芸術監督として上演演目に選びました。

小山:自分の周りではパルコの朗読を観た人が何人かいて評判がよかった。

長塚:イギリスのキャサリン・ハンターが一人芝居で上演したのは知っているけど観たことがないからどうやったのかわからない。そうしたら片桐はいりさんと安藤玉恵さんを提案された。前に片桐はいりさんと一緒に仕事したときには「もう人間とか演じないで物とかやりたいんだよね、物」と話していたので(笑)そんな人がどうやるのかとても興味があった。

片桐:そんなこと言いましたっけ。

長塚:片桐はいりさんは小野寺修二さんの舞台に出たりしてフィジカル寄りの印象を持っていた。

片桐:近ごろは(ひざ? 脚? をさすりながら)身体の調子が悪くてフィジカルな舞台に出られないんです。もともと台詞を言うのは苦手だったけれどもそれでも舞台に出たいと思ったら台詞をやるしかない、と。だから一人芝居に挑戦したけれどいつも悩んでいます。特にこんなご時世(戦争のことか)だから火花の話(終盤)の台詞なんてどうやって言おうとか。

小山:片桐はいりさんは理想が高くて妥協しないから毎公演で終わった後に舞台裏に戻ってきたら「上手くいかなかった」って言っているんです。

片桐:そういう舞台裏はお話しないでください。だったら金返せって言われても返せませんから(笑)。

長塚:オープニング、顔を出すところからすでによかった。

片桐:稽古は安藤玉恵さんと一緒でした。それで初めは幕に影を映しながらゆらゆらとやるオープニングを提案したけどこれは演出で却下されました(笑)。安藤玉恵さんは「それなら私は天井から降りてきたい!」って話していましたけどそれはありません(笑)。でも私とは別のオープニングです。

長塚:稽古はどうでしたか。

片桐:安藤玉恵さんと共通にするポイントだけ決まっていて間は好きにしていいという演出でした。で、元がラジオドラマだからト書きの一切ない脚本なんですね。つまり自由にやらせてもらおうと。カメラを使うのは小山ゆうなさんの提案です。

小山:でも発想がすごい。スプーンフェイスがカセットテープを相手に吹込む場面は片桐はいりさんの提案なんです。しかもそれを隠したところが父親の荷物の間なんですよね。

長塚:朗読はほとんど稽古期間が取れなくて、それでも頼んで5日間稽古したけれど、翻訳も同じ常田恵子さんなのに「あれ、こんな場面あったかな」と観ていて焦りました(笑)。ああいうことはどうやって思いつくんですか。

片桐:わざわざ考えることはなくて、周りのもので何とかするというか。カセットテープのことだと稽古場をぐるっと見渡して、よしこれ、ってそこまで深く考えずに試しました。

長塚:人形に話しかけたり。

片桐:自分版の演出はいつも台詞を誰に話すか問題があるので。あまり話すとこれから向こうも観てくれる人にネタばれになるから言いませんけど安藤玉恵さんはもっと客席に語り掛けるスタイルです。自分はストレートにそのままやりたくないからわざわざ面倒な演出を試してしまって。

それで出来れば両方観てください、みたいな話をして終わったのかな。こんな感じの話でしたけれど、昔はもっと覚えられたのに(嘆)。

2024年1月27日 (土)

ホリプロ/フジテレビ主催「オデッサ」東京芸術劇場プレイハウス

<2024年1月26日(金)夜>

1999年のアメリカはテキサス州の町オデッサで、町の老人が殺される事件が起きた。重要参考人としてバックパッカーの日本人を事情聴取したいが英語がさっぱりわからないという。他の事件の捜査で人手の足りない警察は、遺失物係の警部一人に事情聴取を任せきりにした上に、署の部屋も足りないからと貸さず、警部は近所の酒場を借りて通訳を手配して事情聴取の準備を行なうはめになる。通訳としてやってきた町に数少ない英語のわかる日本人だが、バックパッカーの男性ともどもお互い鹿児島県出身ということで盛上がってしまう。事情聴取が始まったら自分がやったといきなり自白するが、同じ地元で親近感を感じた通訳は英語では無実を主張していると話を曲げて、その間に男性に翻意を促す。

三谷幸喜の新作。いやいやそうはならんだろ、というところから話を転がしていくのはノリで言えば覚えている話だと「ショウ・マスト・ゴー・オン」に近い。ただ、よくできているのだけどもっと面白くできたよねという仕上がり。

やや真面目な要素も入ってくるけど根っこがとにかく無茶な話なので、それをもっともらしく見せるためには役者の力技が必要。しかも3人芝居ということで無茶をやり続けないといけないのだけど、だいたいの無茶の始まりになる柿澤勇人も、英語も日本語もスムーズに切替えての役作りが熱演はさすがの宮澤エマも、真面目に不真面目するには真面目すぎた。声芸一発で持っていった迫田孝也よりもさらに引出が求められて、しかも字幕と合せるための制約が多いだろうとはいえ、まだまだこんなもんで仕上がったつもりになってもらっては困る。これは誰だろうなと観終わって考えたけど、柿澤勇人に求められていたのは大泉洋かなと思った。無茶言うなと言われても困るけど。

ただひとつだけ言えば、脚本もひとつ矛盾があった。早く見ておけばってのは駄目。笑いの駄目押しのつもりで入れたと思うけど、あれは削らないと他の話と齟齬が出る。三谷幸喜らしくない見落しだった。

日本語と英語のちゃんぽんとなる舞台を、その脚本も英語で2人だけで話す場面では日本語に戻るところを舞台を動かして観客に教える工夫が親切設計。だけど一番の親切は字幕。舞台背面を目いっぱい使ってあのくらい自由に動かす字幕だとほとんど演技の一部。お笑いバラエティーの字幕をさらに先に進めていた。最後の役者紹介、あれはミステリードラマの役者紹介とフォントを合せていたのかな。なんかこちらも気づいていない仕込みが字幕にたくさんありそうです。

ネタバレにならないように感想を書くのは難しい芝居ですけど、これはツアーも含めた公演終盤に観たかった芝居です。

2023年12月31日 (日)

2023年下半期決算

恒例の決算、下半期分です。

(1)asatte produce「ピエタ」本多劇場

(2)範宙遊泳「バナナの花は食べられる」神奈川芸術劇場中スタジオ

(3)国立劇場主催「菅原伝授手習鑑 三段目/四段目/五段目」国立劇場小劇場

(4)劇団☆新感線「天號星」THEATER MILANO-Za

(5)梅田芸術劇場企画制作「アナスタシア」東急シアターオーブ

(6)ヨーロッパ企画「切り裂かないけど攫いはするジャック」本多劇場

(7)タカハ劇団「ヒトラーを画家にする話」シアターイースト

(8)劇団四季「キャッツ」名古屋四季劇場

(9)御園座主催「東海道四谷怪談/神田祭」御園座

(10)新国立劇場主催「尺には尺を」新国立劇場中劇場

(11)新国立劇場主催「終わりよければすべてよし」新国立劇場中劇場

(12)松竹主催「吉例顔見世大歌舞伎 夜の部」歌舞伎座

(13)世田谷パブリックシアター企画制作「無駄な抵抗」世田谷パブリックシアター

(14)阿佐ヶ谷スパイダース「ジャイアンツ」新宿シアタートップス

(15)劇団四季「ウィキッド」四季劇場[秋]

(16)劇団四季「アナと雪の女王」四季劇場[春]

(17)株式会社パルコ企画製作「海をゆく者」PARCO劇場

(18)松竹主催「十二月大歌舞伎 第三部」歌舞伎座

(19)松竹主催「十二月大歌舞伎 第一部」歌舞伎座

以上作品の括りでは19本、チケットの括りでは20公演、隠し観劇はなし、すべて公式ルートで購入した結果、

  • チケット総額は 209100円
  • 1公演あたりの単価は 10455円

となりました。上半期の16本18公演と合せると35本38公演で

  • チケット総額は 373800円
  • 1公演あたりの単価は 9837円

です。なお各種手数料は含まれていません。

また今シーズンも映画館で芝居映像を観ました。

(A)National Theater Live「オセロー

(B)National Theater Live「ハムレット

(C)National Theater Live「フリーバッグ

(D)National Theater Live「リア王

(E)National Theater Live「かもめ

(F)ゲキ×シネ「薔薇とサムライ2

(G)National Theater Live「スカイライト

以上7本、隠し観劇はなし、すべて公式ルートで購入した結果、

  • チケット総額は 20300円
  • 1本あたりの単価は 2900円

となりました。上半期の1本と合せると8本で

  • チケット総額は 23300円
  • 1本あたりの単価は 2913円

です。なおこちらも各種手数料は含まれていません。

チケット単価は半期では1万円を超えました。通年でも1万円を超えるんじゃないかと心配していましたが、それは何とか1万円は切りました。下期も劇場閉館前だとか、新劇場見物がてらだとか、仁左衛門を観たいとかやっていましたが、ミュージカルだとかやったらこれです。

NTLiveはありがたかったですね。いい芝居もありますけどそれなりの芝居もあって、やっぱり海を渡って上映される芝居ですら当たり外れはあるものだとわからせてくれました。(C)(G)がよかったです。

東京まで交通費がかさむにしても遠征というにはおこがましい私でしたが、今年はついに芝居メインで名古屋に初遠征しました。観光も楽しみましたが、これでふらっと劇団四季を観に行ったのがよくなかった。めぼしい演目を観たろうかいという気持ちになって3本も観てしまいました。キャッツが1本目じゃなかったらこの気持ちにはなりませんでしたね。運がいいのか悪いのかわかりません。

そしてこれだけ観ておいて贅沢な話なんですが、気持ちが乗らずに観ていた芝居が多いです。体調不良なのか、年を取って体力が落ち来ているのか。ラインナップを眺めたら古典やロングランや再演が多いのは気分です。小劇場開拓する元気がほとんどありません。

下半期の寸評は、数少ない小劇場開拓で現代の社会芝居を小劇場仕立てで見せてくれた岸田國士戯曲賞の再演になる(2)、仕上がりに文句はあっても脚本に感心した(7)、全員が歌って踊れるミュージカルの(8)、今年の話題となった問題を古典に絡めた意欲作の(13)、ベテラン5人でごりごりの会話劇を見せた(17)、「天守物語」で出ている役者にも仕上がりにも感心しきりの(18)です。

下半期で1本を選ぶなら(2)か(13)で同点です。ただし通年なら、誰が観ても文句なしに楽しめてしかも扱うテーマもその2本に負けず劣らず社会性のあった三谷幸喜の「笑の大学」で決まりです。「笑の大学」を観たのはなんかもう3年前くらいのように思っていましたけど、今年だったのかと見返して驚きました。

今年は舞台寄りの芸能界の事件がまとめて出てきたようなところがありました。元気なときなら書いていただろう事件ばかりです。大きいところでは、ジャニー喜多川がお気に入りどころか片っ端から襲っていた性加害の話が事実認定されたジャニーズ話、猿之助がセクハラパワハラを暴露されて親と心中しようとして結局自分は死ねずに親殺しになった歌舞伎話、いじめと呼ぶにはきつい扱いだったところに新人公演責任者が自殺した宝塚話。猿之助は有罪が確定しましたけど、他の2つはまだ現在進行中です。この3つの話が大きすぎて、年末に薬物で捕まった小劇場出身役者がいましたけど、出演していた芝居の公演が終わるのを待ってから逮捕していたから警察も優しいな、くらいの感想しか持てませんでした。

そもそも芸能界は売れっ子が幅を利かせる世界ですけど、その中でもファンが甘いから内部でどれだけひどいことをしても売れっ子が許される業界として、頭文字を取ってもともとJKTと呼ばれていたそうですね。この呼び方は知りませんでした。ただ、個別の事件それぞれに、知っていた話と初めて知った話が混ざっていて、そこにそれはひどいという話とそれは当り前だろうという話とが混ざっていて、真面目に話すならきちんとブログに書かないといけませんけど、その元気がありませんでした。

芸能界全体で言えばジャニーズにとどまりませんけど、直接はジャニー喜多川の性加害をオイディプス王の枠組みで連想させつつ、さらにそれを無視するマスコミやファンを、駅に止まらなくなった電車や芸をしない大道芸人を配して描いた(13)は下半期渾身の1本だったと思います。

性加害なり暴行なりを加えた側の犯罪者を許す気はありません。ただ、芸能界は本来「芸を通じて出す本人の色気で客を誘惑する仕事」なんですよ。色気といってもいわゆるお色気だったり、上り調子の人間が出す勢いだったり、必死に何とかできるようにしようともがくところで出す執念だったり、芸で自由自在なところを見せて自信満々の覇気だったり、色気にもいろいろありますけど、とにかく、ただ上手いだけの芸では劇場まで客は足を運ばないんです。「すごいね」で終わりです。そうではなくて「きゃー」とか「うおー」とか言わせられて初めて客は財布を開きます。もちろん周りもいないと公演できませんし、周りの水準が公演の水準につながりもしますけど、それだけで客はお金を払いません。

だから芸能界は堅気じゃないと長らく区別されていました。観て聴いて楽しんでも、堅気の子女が演るものではないと。やむにやまれぬ事情のある人が飛び込むか、何をやっても堅気の仕事が長く続かない人か、どうしても表現に関わることしか出来なくてそれを仕事にする人か、そういう人がやっていたんです。そういう人たちを仕切るのに堅気のルールじゃ言うことを聞いてくれないから、興業を回すために乱暴な秩序もあった。そういう理解です。

なのにどうしてそれが堅気の世界と混じってきたんだろうな、というのが今年考えても考えきれなかったことです。世の中全般の常識が堅気寄りになってきたのは理由の1つでしょうけど、それだけではないだろうと思います。他のいろいろな社会状況を考えないといけないんですけど、元気が足りませんでした。乱暴な秩序だって、日本人を捕虜収容所で放置したらそういう秩序になってしまったと書いていたのは山本七平だったかな。「虜囚日記」だったかもしれない。とにかく考えないといけないことが多い。

ただ、芸能界であまりにひどいと言われているところがいったんドブさらいされたとしても、根本に「芸を通じて出す本人の色気で客を誘惑する仕事」というものがあるなら、またそのうちドブが溜まると思います。私は芝居だけなら割といろいろ観てきたほうだと思いますけど、上手いだけの芝居なら観ても褒めません。芸能界が本当にきれいになったら、色気を持つ人がいなくなって、客が金を払わなくなって、衰退するでしょう。(13)の書けなかった感想の代わりに「観客という立場である私個人との見解の違いにすれ違いも感じた。その点で『無駄な抵抗』というタイトルの正確さには深く同意する」と書いたのはそういうことです。一時的にでもドブがさらえるなら無駄な抵抗ではないと言われたらその通りですが。

そんなことをああでもないこうでもないと考えていたら、観た芝居の記録を取るので精一杯でした。チケット代に交通費も加えた出費がかさんでいるので、もう少しの間、古典なり他分野なりを一度気が済むところまで観て、そこからぐっと観る本数を落としたいです。

引続き細く長くのお付合いをよろしくお願いします。

2023年12月30日 (土)

National Theater Live「スカイライト」

<2023年12月30日(土)朝>

ロンドンの、治安がよくない地域でアパートに独り暮らしをする女性の元に、かつて一緒に暮らした一家の息子が訪ねてくる。女性が出て行き、母が亡くなってから父の様子がおかしいので会ってほしいと言う。息子が帰ったあと、父である男性が訪ねてくる。女性は実家を出て男性が経営するレストランで勤務し、その一家に見込まれて一緒に住んでいたが、男性と不倫関係にあり、関係が妻に知られてから姿を消していた。話は近況の報告からお互いの価値観、そして過去の出来事と様々に進む。

National Theater Liveの10周年記念アンコール上映をやっていたので急遽参戦。一度日本上演を観ていますが、こちらは本場の再演版。

設定がかなりすっと入ってきたのは、出演者の歳の差が見た目でわかりやすかったのと、舞台美術であまりいい地域のアパートではないことが伝わったのとがあります。男性側のビル・ナイがやり手の実業家にしては甘い雰囲気でやって、女性側のキャリー・マリガンは教師っぽさがあまりなかったけれど、それでもがっぷり組んだごりごりの会話劇。そういう芝居が観たい気分だったのでちょうどよかったです。喧嘩をしてもうるさくならない芝居はいいものですね。

幕間に脚本のデヴィッド・ヘアーがインタビューで出てきて、当時の社会の様子を書いたと話していましたけど、答え合せするのはつまらない。そこは観て考えたいです。

2023年12月28日 (木)

2024年1月2月のメモ

挙げても観る数は抑えたいです。

・松竹製作「壽 初春大歌舞伎」2024/01/02-01/27@歌舞伎座:昼の部には幸四郎で「狐狸狐狸ばなし」、夜の部には白鸚幸四郎染五郎が三世代揃って「息子」と名前だけ知っている踊りの「京鹿子娘道成寺」

・パルコ企画製作「志の輔らくご in PARCO 2024」2024/01/05-01/31@PARCO劇場:縁起ものです

・ホリプロ/フジテレビ主催「オデッサ」2024/01/08-01/28@東京芸術劇場プレイハウス:三谷幸喜の新作三人芝居だけどこの設定はどこかで見たことがあるようなないような

・namu「地獄は四角い」2024/01/12-01/14@OFF・OFFシアター:よさげな役者を集めて旗揚公演なのでピックアップ

・serial number「アンネの日」2024/01/12-01/21@ザ・スズナリ:ナプキン開発を通して描かれる開発メンバーの生理にまつわる話だけどいい芝居だった記憶がある

・二兎社公演「パートタイマー・秋子」2024/01/12-02/04@東京芸術劇場シアターウエスト:脚本が現実負けしていそうな予感があるけど役者でピックアップ

・スーウェイ「逢いにいくの、雨だけど」2024/01/31-02/04@小劇場B1:iakuで評判のよかった芝居の他劇団上演

・松竹製作「猿若祭二月大歌舞伎」2024/02/02-02/26@歌舞伎座:昼の部は勘九郎七之助に仁左衛門まで出て「籠釣瓶花街酔醒」、夜の部は勘九郎七之助のお家の話「猿若江戸の初櫓」に「連獅子」

・風姿花伝プロデュース「夜は昼の母」2024/02/02-02/29@シアター風姿花伝:風姿花伝プロデュースですから

・松竹製作「ヤマトタケル」2024/02/04-03/20@新橋演舞場:ここでいっそ観に行く元気が出るかどうか

・神奈川芸術劇場プロデュース「スプーンフェイス・スタインバーグ」2024/02/16-03/03@神奈川芸術劇場大スタジオ:死にゆく7歳の少女の一人芝居を片桐はいりと安藤玉恵のダブルキャストで

・劇団四季「ジーザス・クライスト=スーパースター」2024/02/16-03/24@自由劇場:劇団四季の割と初期からやっているミュージカル

・KERA CROSS「骨と軽蔑」2024/02/23-03/23@シアタークリエ:豪華な女優を集めてKERAの新作

・ウォーキング・スタッフ「5seconds」「Nf3Nf6」2024/02/24-02/29@シアター711:野木萌葱がパラドックス定数で書いた二人芝居の交互上演だけどどちらもめっぽう手強い脚本

並べてみて眺めると、あんまり素直に笑って元気が出そうな芝居が少ないですね。そういう世相なのか、そういう気分なのかわかりませんけど。

<2023年12月30日(土)追記>

1本追加。

2023年12月24日 (日)

松竹主催「十二月大歌舞伎 第一部」歌舞伎座

<2023年12月17日(日)昼>

生まれた子供を妻の母に見せようとやってきた夫婦だったが、母はすでに病気で亡くなっていた。旅の途中、近所の娘の世話で寺に一夜の宿を求めることになったが、寺を預かる老婆は亡くなった妻の母とそっくりだった。甦ったのだというのだが「旅噂岡崎猫」。千本桜の咲く神代の時代に、異国からの青龍の精の襲撃を受ける。千本桜の守護である白狐や美玖姫は辛くも難を逃れるが、千本桜は花を散らした。それから千年後に再開した白狐と美玖姫は「今昔饗宴千本桜」。

旅噂岡崎猫は坂東巳之助が始めからわかりやすい格好で出てきてやっぱり悪い化け猫という話。その坂東巳之助もよかったのだけど、夫婦に寺の宿を世話する近所の娘のおくらを演じた坂東やゑ亮が本当によかった。怪しげな術に操られて飛んで跳ねての大忙しだった後半も見どころたっぷりでよかったけど、それより前の普通の役のところであまり女形女形せずに快活に演じていて、だけどこういう女性は今でも周りに見かけるし昔もいただろうというモダンな女形、生きた娘役だった。ずるかったり親切だったり怖がったりと忙しい変化も納得できた。大立ち回りに影を使ったり障子が血でべっとりしたりと外連味たっぷり。初歌舞伎でも満足できること間違いなしでしょう。

で、本命の今昔饗宴千本桜。初めに挨拶で獅童が出てきて説明からお約束からペンライトの使い方から屋号の声掛け練習までしてくれる親切仕様。初音ミクまで出して準備万端といったところで開始。おとなしく観るつもりだったけど休憩時間にロビーを歩いていたら安いペンライトも売っていて、人生で一度くらいスチャッ! とやってみてもいいかなと思い直して買っておいたのがよかった。この日はうっかり良席で観られたのだけど、屋号は呼ばなくてもペンライトくらい持っていないと格好がつかない。隣の真面目そうなお姉様が気が付いたらペンライトを持って待機していたし、立派な着物をお召の奥様が終盤の場面でまっ先に立上がってペンライトを振っていたし、人は見た目だけではわからないものです。

それで派手な映像あり宙乗りあり桜吹雪砲もあり小川夏幹陽喜ありと会場が一体になって盛上がって終わったあとの感想ですけど、残念ながら出来がよくなくて気に入りませんでした。

ひとつは初音ミクの間の悪さ。録っておいた声をオペで流したのか、裏方がいてボイスチェンジャーでリアルタイムで台詞を言っていたのかはわかりませんけど、もたつきます。音が出るまでに時間差があるならそれも含めてここはこの間だろうと突き詰めてほしい。

ひとつはスクリーン頼みの映像。そりゃあ二次元の映像をどこかに映さないといけないのですけど、ちかごろのプロジェクションマッピングの進歩は目覚ましいのにスクリーンだけしか使わないのは古い。たまたま今年はミュージカルを多く観ていて「アナスタシア」とか「アナと雪の女王」とか観ていますけど、後ろのスクリーン+サイドの美術+たまにセンターの美術で話に合せた映像の使い方はあちらさんのほうが上手です。なんなら野田秀樹ですら「兎、波を走る」で高橋一生を飛ばしていた。

初音ミクが二次元文化から出てきたものだからパソコンやスマホを考えてスクリーンに引っ張られるのかもしれませんけど、スクリーン以外も使えればもっと自由度を広げて初音ミクを左右だけでなく前後にも動かせます。スクリーンを使うなというのではなく、スクリーン以外も活用したものを観たいなという希望です。

そして最後は脚本の薄さ。説明やら会場を巻込んだ一体感やらのために1時間25分の短さからさらに20分は削られていると思いますけど、スーパー歌舞伎は言うに及ばず、昔話にもなっていなかった。桃太郎が桃から生まれたら次にはもう鬼が島で鬼退治くらい、起承転結ではなく起結くらいの薄さだった。その分だけ派手な映像や立回りが多かったのですけど、それが芝居かと言われると自分の考える芝居ではない。

凱旋は結構、ここで息子のお目見えが出来たのも結構。ただし超歌舞伎としてはもっと作りこまないと派手だねの一言で終わってしまう。自分が感じた3つの不満を解決するためには、初音ミクありきでない脚本を作ってから初音ミクを組込むようにアレンジして、舞台美術と照明と映像を創りこんで、会場も歌舞伎座以外の劇場で昼夜2公演1か月以上の体制を組んだ方がいい。歌舞伎座で他に混ざっての一本だと技術の仕込みに限界がある。

初音ミク目当てでやってきた客を飽きさせないためにもう一本として旅噂岡崎猫が選ばれたと思いますけど、あれは肉体を駆使してのアクロバットだからアナログな美術でもしっくりきます。客の感想としては旅噂岡崎猫のほうがよくできていました。

ところで第三部と合せて四本の演目を観たのですけど、全部の演目で人ならぬ身のものが出てきました。どの演目も最後はなんとなくごまかされて終わってしまったところも含めて、今月は化け物尽くしだぜと中の人が狙ったような気がします。

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