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2021年11月23日 (火)

世田谷パブリックシアター企画制作「愛するとき 死するとき」シアタートラム

<2021年11月20日(土)昼>

東ドイツの学生の青春と終わりを描く第一部。東ドイツで反体制派だった父は逃げ伯父は捕まった母と子供たち兄弟、12年後、それゆえに大学に入学させてもらえないと屈折した青春を送る家族の前に釈放された伯父が戻ってくる第二部。妻子を持ち仕事で単身赴任する男が、赴任先で出会った女と恋愛関係になる第三部。

観て得るものはあったけど、もう一回見直してもまだわからないだろうなという超がつくほどの不親切芝居。時間を置いて書こうとしたら大まかな話の流れすら思い出すことがおぼつかない。

青春モノとか日常モノのとか、うっかりすると「劇的な」イベントがなく淡々と過ぎてしまう、ただでさえ舞台と相性の悪いジャンルで、本当に淡々とした脚本。そこに、ベルリンの壁が崩壊して30年以上経つ東ドイツが舞台という悪条件で、脚本にない情報を補足してほしいところ一切なし。かつ、覚えづらい名前の大勢の登場人物が第一部から第三部まで全員入替る上演なのに、第一部と第二部は登場人物を浦井健治や高岡早紀も含めた全員が複数役で演じるという混乱に輪をかける上演スタイル。

つらい世の中では子供から大人までまんべんなくしんどいよね、そんな世の中でも生きていくなかで恋愛は苦いことも多いけど必要だよねという脚本家の想いと、いまのつらい世の中は東ドイツ時代の閉塞感と似ているからそこを舞台にすることできっとむしろ現代らしく描けるはずだという脚本家の思いつきが合体したのがこの脚本のはず。それを、「チック」みたいな芝居他にもありませんかと2匹目のドジョウを狙った制作に、日本もつらいからぴったりです、学生とかつての学生の青春モノです、大勢の役が登場するけど「チック」みたいにひとり複数役でやります、とドイツ語の読めない制作を演出家が丸め込んで上演した。妄想レベルで考えると、そのくらい関係者のすっとぼけがないと上演された理由がわからない。

地味でわかりづらい脚本なのに、演出が何をやりたいのか見えなかったのがひとつ。それと交互に複数回出てくる役を、全員が複数役でやるというのがとにかく悪手で、複数役の演じ分けがほとんどわからないのがもうひとつ。「チック」は主役固定、かつロードムービー風なので一度出てきた役は後からほとんど出てこないという有利な面があったけど、これはそうではない。もう、観ていてわからないことによるストレスが大きすぎる。

で、わからなかったことへの文句を散々書いた後で得たところの話。ひとつは第二部の伯父。(たぶん)政治犯収容所のようなところで12年過ごして丸くなった伯父は、普通なら自殺していてもおかしくない。そこをしぶとく生きて、兄嫁(兄弟の母)に結婚を申しこんで一緒に暮らす。この伯父が、好きな女の子を兄に取られて落込む甥を酒場で「目立つな、英雄を気取るな、列に並んでみんなと一緒に行動しろ(公式サイトより)」と励ます場面。言葉をそのまま読んだら格好悪い台詞だけど、ここを浦井健治は、チャンスが巡ってくるまで何よりもまず生き延びろ、というニュアンスでやった。伯父役はぼそぼそと話す役作りだったけど、そこからさらに声を落としたこの場面が、実際に生き延びて甥の母と結婚した伯父の役や、他の場面で自殺する学生がいたことと合せて考えると、全編を通して鍵になる場面だったのかなと思い返す。

得たところのもうひとつは、役者としての浦井健治。観客の妄想では、出演者の中で唯一、おそらく演出家よりも、脚本を理解して演じようとして、また演じる技量があった。芝居を保たせていたのは間違いなくこの人の貢献。普段あれだけ華やかな芝居もできる役者なのにこの地味芝居に挑戦してしかも一定の成果を上げていたことは最大の発見。新国立劇場のシェイクスピアシリーズに出ていたのは伊達ではなかった。ちなみに高岡早紀は、もうわからんからいつも通りやりますとやって、しかもそれがいい線までいっていた印象。ただ第三部、独白というか地の文の語りというか、それが苦手でかなり損していた。ついでに書くと至近距離で観てあの美人ぶりは凄い。他のメンバーは、個々の場面を観れば悪くないけど、通して観たときには複数役の演じ分けの前に撃沈。おそらく脚本段階で混乱している。

察するに、小山ゆうなは綿密な演出プランで稽古に臨むよりは、役者にやってもらった内容を拾っていくスタイルなのではないか。欧米はそういう演出スタイルが主と読んだことがある。けど、それは稽古も含めて準備に年単位の時間が確保できる前提で、1か月前後の集中稽古で仕上げる日本なら脚本の整理や登場人物の関係構築も、ある程度は演出が主導する必要があるのではないか。

察したり妄想したり忙しい感想だけど、何がいいたいかというと、自腹で高い金額を払って、演出が悪いと一観客として判断したので、文句は演出家が引受けてくれということ。

2021年11月15日 (月)

国立劇場も建替の時期

共同通信「国立劇場、文化観光の拠点に」より。

 日本芸術文化振興会(芸文振)と文化庁は、老朽化した国立劇場(東京都千代田区)の建て替えに伴い、劇場上部にホテルを整備する計画を進めている。周辺にある皇居・三の丸尚蔵館や東京国立近代美術館と連携し、文化観光の拠点としてにぎわい創出につなげる。

 民間事業者が一体的に整備し、劇場と上階部分の運営も担う。上階部分は「民間収益施設」と位置付け、ホテルのほかレストランやカフェも想定。オフィスエリアを設けることもできるが、観光拠点としての機能が期待されており、マンションは認めない。

 月内にも事業者への具体的な要求水準を公表し、来年4月ごろに公募を始める。

行った回数は少ないですが、客の歩けるエリアは、劇場としては国内有数の余裕を持たせた造りです。客席からの見やすさも上々でもったいないですが、1966年開館では耐震基準が古くて、耐震補強よりいっそ建替えにとなったのでしょう。都心のど真ん中にあのくらい低層の贅沢なスペースがあってもいいと思いますけど、贅沢すぎて許されだろうことも想像できます。

建替えた後になって「前のほうがよかった」と言われないように、よい劇場に生まれ変わってほしいです。

チラシの絵を描いていた作者を発見

風姿花伝プロデュースのチラシ、妙に芝居に合せた内容の油絵になっていることがあります。油絵なんてずいぶん手間暇かかるだろうし、作者が「佐和子」とだけ書かれていたので、どこでこんな絵を見つけてきたのだろうと気になっていました。たしか「女中たち」が気になった最初です。今見てもこの絵は好きですね。

で、ふと見つけたインタビューで納得したら何のことはない。苗字まで入れたら那須佐和子、プロデューサー兼出演の那須佐代子の娘でした。藝大生の油絵専攻なら本職ですね。クレジットが絵画提供なのも納得しました。

長年の疑問が解けてひとつすっきりしました。

Bunkamura・大人計画企画製作「パ・ラパパンパン」Bunkamuraシアターコクーン

<2021年11月14日(日)昼>

デビュー作が佳作、以降は鳴かず飛ばずの女性ファンタジー作家。それまでの路線から心機一転、新作はミステリーを書くと宣言したものの、粗筋すら思いつかずに締切が迫る。呆れる担当編集者だったが、編集長から今回の企画をあきらめるように指示されたことで、むしろ協力姿勢を示す。ふと話題に挙がったクリスマスキャロルから、守銭奴のスクルージが殺されればミステリーになると思いつくも、有名なミステリーも読んだことがない作家なので、展開も時代考証もでたらめなまま、勢いで書き進めるうちに、現実と作中とが曖昧になっていく。

翻訳でなく完全新作で松尾スズキが演出専念。ファンタジックミステリーコメディと銘打って、年末を狙った古典を題材に。ミステリーの要素もそれなりに考えられているが、肝心な何か所かをファンタジーに頼って解決しているので、ファンタジックコメディのほうがしっくりくる。ものすごい雑にまとめると、松尾スズキが演出した「サンタクロースが歌ってくれた」だった、とか書いて何人わかってくれるか。

スローな場面が、特に前半に多くて何かと思ったら、あれはテレビドラマのテンポか。脚本の藤本有紀は舞台脚本経験もあるが今時点ではテレビの脚本歴のほうが長い模様。テレビの連続ドラマと違ってつきっきりで観る芝居の場合、説明は劇中のどこかでされればいい、むしろ説明情報を散らしたほうが自然になるのでまとめて説明する必要はないところ、ちょっとうっとうしい会話が多かった。大勢の豪華メンバーにはそれなりに見どころを用意するという副作用もあって、それも重たくなった一因。

そんな中でも攻めてこその小劇場出身者。いまも全力でカマす皆川猿時に敬意を表しつつ、どんな演技でも常にテンション全開だった小松和重と、あれだけボケてもスクルージ役の雰囲気を壊さない小日向文世の技を挙げたい。歌も演技も上手い松たか子には満足だけど、松たか子に歌わせれば元は取ってもらえるだろうという姿勢も感じなくはない。スレた観客としては、松たか子が観たいのではなく、立上げ至難の舞台で成立困難な役を成立させたときにこそ役者は輝くのであり、それを成立させる実力を持つ松たか子が実力を発揮したところを観たいのだと言いたい。

それなりに笑いながら観たのに何でこんなに辛い感想になるのか、チケット代が高かったからか、と書いてから考えた。たぶん「現実と作中とが曖昧になっていく」パターンを芝居でよく見かけるから、自分の中でハードルが高くなっている。先に挙げた「サンタクロースが歌ってくれた」は映画の登場人物が現実に出てくるパターン。後藤ひろひとなんかはそれがとても上手で、「人間風車」が有名だけど、今回の連想では作中というか伝説を語る体の「ダブリンの鐘つきカビ人間」を思い出す。どれもだいたい2時間強で収まっていた。

今回は演出と演技で頑張って成立させた印象だけど、歌を入れて、休憩20分を挟んで、カーテンコールまでで3時間10分。ここから絞って、歌抜きなら2時間でいけるくらいまで密度を濃くした脚本で観たかった。絞る価値ある脚本だったと感じたからなおさら。

昨今は長い芝居の上演に寛容で、そのおかげで上演できる芝居の幅は広がったかもしれないけど、必要性を感じられずに無駄に長いのはよくない。無駄かどうかを何で判断するかと言ったら密度。笑いでも、情報でも、役同士の関係でも、雰囲気でも、なんでもいいけど、舞台上を流れる空気の密度。

あとメモ。今回の休憩時間、シアターコクーンが1階の入口前を一部閉鎖して(傘置き場のあたりから、レストラン手前まで)、休憩中の人がロビーに溢れないように、かつそこまでなら再入場不要になるよう工夫してくれていた。吹抜けだから外気にも当たれるし、あれはとてもよかったので記録しておく。思いついた人と実施決断してくれた人に拍手。できれば中二階も外に広げてほしかったけど、あそこはオーチャードホール入口への通路をふさぐから駄目だったか。

2021年11月 9日 (火)

いつか調べてみたい公立劇場が貸劇場演目の紹介に冷たい理由

タイトルの通りです。主催公演は丁寧な紹介ページがあっても、貸劇場公演は区別して公演予定のみ掲載しているところばかりです。fringeのTwitterで同じ疑問が呈されていました。

fringe@fringejp
公共ホールの公式サイトで、主催公演と貸館公演の情報掲載の差がありすぎるところが少なくない。非常に見つけにくいページや非掲載の場合もある。貸館も劇場法に定められた役割で、観客から見ればどちらも「そのホールでやっている公演」。出来る限りの情報を掲載するのが、公共ホールの務めだと思う。

劇場法は、公演の主催や学芸事業だけを定めているのではない。貸館も重要な役割であり、法の目的に合致するものだ。どうしてそんなに貸館を別扱いするのだろう。魅力ある貸館公演を揃えるには、公共ホール自身の努力も不可欠で、主催公演に匹敵する成果だと思うのに。逆に大々的に掲載したらいいのに。

自分が公演を調べるときに不便なので昔から気に入らなかったのですけど、あるとき何か理由があるはずだとひらめきました。思いついた仮説は2つあって、「民間業者の宣伝になってしまうと税金の投入とみなされてしまうから宣伝できない」か「うっかり変な団体に貸してしまった結果とんでもない事業の宣伝に手を貸した(しかも箔付けした)ことになってしまう可能性を封じるために一律自粛している」のどちらかではないかと推測しています。

前者だと法律の話、後者だと実例があったための自衛策、どちらも調べるとわかりそうなものなんですけど、最近調べごとをする気力に欠けているので追いついていません。匿名でいいから誰か中の人が書いていてくれないかなと他力本願です。

2021年10月23日 (土)

2021年11月12月のメモ

新型コロナウィルスのワクチンは無事に打てたのですが、外出控えすぎたら体力が落ちて、厳しそうな内容の演目に向きあう気力まで萎えがちです。いまいち芝居に積極的になれませんが、さすがの年末ラインナップなので何本かは観に行きたい。また緊急事態宣言が出るようなことになりませんように。

・松竹主催「吉例顔見世大歌舞伎 第二部」2021/11/01-11/26@歌舞伎座:有名そうな「寿曽我対面」に仁左衛門の「連獅子」を合せて

・Bunkamura・大人計画企画製作「パ・ラパパンパン」2021/11/03-11/28@Bunkamuraシアターコクーン:松たか子を主演に脚本を藤本有紀に依頼して松尾スズキは演出に徹するファンタジックミステリーコメディだそうです

・パルコプロデュース「ザ・ドクター」2021/11/04-11/28@PARCO劇場:10月のさいたま芸術劇場から引続きです

・世田谷パブリックシアター企画制作「愛するとき 死するとき」2021/11/14-12/05@シアタートラム:ドイツ脚本を掘りまくっている小山ゆうなが浦井健治と高岡早紀を呼んでパブリックシアターと思ったらシアタートラムでそりゃチケット売切れますわな

・日本のラジオ「カナリヤ」2021/11/18-11/23@こまばアゴラ劇場:胸糞悪そうな再演芝居だけど去年の上演予定を延期してまでやるなら何かあるのでしょう

・ナイロン100℃「イモンドの勝負」2021/11/20-12/12@下北沢本多劇場:観なくても損はない捨て身の出鱈目芝居と銘打っている割には真面目に風刺とかやりそうな雰囲気を感じる

・加藤健一事務所「叔母との旅」2021年/11/22-11/28@サンシャイン劇場:24役を4人で演じる粗筋から無茶苦茶な展開を予感させる翻訳モノを鵜山仁演出で

・風姿花伝プロデュース「ダウト」2021/11/29-11/30プレビュー、2021/12/03-12/19@シアター風姿花伝:小川絵梨子翻訳演出で風姿花伝プロデュースならノーダウトでいい

・Bunkamura企画製作「泥人魚」2021/12/06-12/29@Bunkamuraシアターコクーン:唐十郎に宮沢りえを観られる機会なんて今後めったにないだろうからピックアップ

・タカハ劇団「美談殺人」2021/12/16-12/20@駅前劇場:面白そうな粗筋だったけど緊急事態宣言で延期になった新作

・座・高円寺企画製作「アメリカン・ラプソディ」2021/12/17-12/19@座・高円寺1:年末に何度か上演されているピアノコンサートと音楽家芝居のセットでこちらはガーシュイン

・座・高円寺企画製作「ジョルジュ」2021/12/24-12/26@座・高円寺1:こちらはショパンで竹下景子と植本純米が出演

他に新国立劇場で有名なバレエやオペラの演目があるから、こういう時に勉強できるとよかったのだけど積極的に出歩くにはまだ気が引ける。

ところで今回調べていて気が付いた吉祥寺シアター。少なくとも11月に阿佐ヶ谷スパイダースの上演があるのに、12月どころか11月の劇場カレンダーすら1週間前で未公開でした。いつも公開が遅い劇場なのは知っていましたが、今回はさすがにやる気がなさすぎではありませんか。

2021年10月 9日 (土)

歌舞伎座の新型コロナウィルス対策の記事から関係ないところを拾ってみる

SPICEに載っていたので紹介。具体的な対策は読んでもらうとして、脇の話をいくつか。

橋本:根底には、演劇の灯を絶やしてはいけないという思いが強くあります。興行が止まることで俳優だけではなく、舞台を支えるスタッフや関連会社、職人たちの技術の継承を止めてはいけないという思いです。その上で、興行ですから収支的な判断からは逃れられません。正直、大変厳しい状況が続いております。その中で50%を維持しているのは、お客様のニーズを見据えた結果です。歌舞伎座にいらっしゃるお客様の中には、安全対策を徹底していることで、ご家族様が『歌舞伎座ならば』と送り出してくれることもあると聞きました。私たちは、歌舞伎を愛してくださるいつものお客様に安心を提供することを優先しています。

千田:海外や遠方からのご来場が難しいご時世、いまの歌舞伎座を支えてくださっているのは、昔から歌舞伎に親しみ、歌舞伎座に来ることが生活の一部となっている、いわゆる常連のお客様。今月のお客様の多くは、おそらく来月もお運びくださいます。1か月に複数回おいでの方もいらっしゃいます。そういったお客様に、安定したサービスを提供することが、大切だと考えています。

良くも悪くもその影響が出るのはもう少し先ですが、観客像を絞ることで対策を進めやすくなっただろうなと思います。

橋本:再開できたのは、巡り合わせが大きかったように思います。歌舞伎座は、現在、歌舞伎だけを上演する劇場で、歌舞伎には“古典”というレパートリーがありました。ロビーの広さや、楽屋の数、配置など、もともと密にならない構造で、換気設備は、通常の運用でも数値的にガイドラインをクリアできていました。ただ、お客様には、視覚的にもご安心いただけるよう、上演中も通路や桟敷席の扉を開放することにしました。歌舞伎座は、たまたまそれができる劇場だったということです。

これは本当にそう。劇場設備で安心感がガラッと変わる。

橋本:コロナ禍により、上演時間の制限ができました。奇しくもこれによって、古典の台本の見直しが進んでいます。古典歌舞伎の上演時間は、現代の感覚だと少し長いのではないか。現代にあった構成や見せ方を模索するべきではないか。そのような動きが、以前からありました。ふり返れば約50年前、海外公演で『仮名手本忠臣蔵』をやるために、本来3時間かかる「大序」から「四段目」までを、1~2時間に再構築したこともあります。先人の知恵を手ぐりよせ、古典として守るべきところは守り、お客様のニーズに即して見直し、制約の中でも感動が充分に伝わる芝居をどう作っていくか。同時に、歌舞伎は古典だけでなく、時代を反映した新作との両輪で成り立っています。この時期に我々に与えられた課題と受け止め、取り組んでまいります。

中の人でもそう考えていたんだという発見。個人的には、なりふり構わない人気演目の連発がうれしいですね。

それにしても製作部部長の橋本氏、ずいぶん役者顔だけど、関係者出身の人かな。当事者感あふれる面魂の写真ですね。奇跡の一枚なのかな。

筋が悪い海老蔵の新橋演舞場公演

2022年1月公演です。ステージナタリーより。

にしのあきひろ(西野亮廣)の絵本「えんとつ町のプペル」は、ゴミ人間・プペルと、少年・ルビッチが紡ぐファンタジー作品。昨年、「映画 えんとつ町のプペル」のタイトルで映画化されたほか、これまでにも数多く舞台化されている。

「えんとつ町のプペル」を原作とした新作歌舞伎「プペル~天明の護美人間~」では、原作・脚本・空間 / 美術演出を西野、演出を藤間勘十郎が担当。主人公のプペル役を市川海老蔵が勤め、原作のルビッチにあたる玄(げん)役を、海老蔵の実子である市川ぼたんと堀越勸玄が演じる。また海老蔵は、物語の鍵を握る玄の父親役・熊八役も兼任する。

作者と作品は別モノなのは新型コロナウィルス騒動で見せつけられましたが、それはそれとして。

芸能界としても触らないほうがいい人、あるいは芸能界から見てもやばいから活動を別枠に隔離したほうがいい人はいるわけです。個人サロンその他で素人相手に芸以外を提供して対価を取る、阿漕な商売をしている西野亮廣はそういう別枠の人だと私は認識しています。

それを原作として作品だけ触るならまだしも、脚本と美術まで絡ませるのはあんまりじゃないのかと考えます。以前、海老蔵が干されていると書きましたけど、こんな付合いがあるようでは干されても仕方がありません。後先はわかりませんが、あるいは干されたからこういう付合いにのめり込むようになったのかもしれません。どこで読んだか、オリンピックの開会式に出たのは禊が済んだことになると書かれていましたが、それでこんな公演をするようでは禊のかいがありません。

料金設定も自由なもので、SS席3万円という破格のチケット代です。値上げ著しい歌舞伎座ですら三部制の1等席1万5000円。仁左衛門玉三郎の桜姫東文章の上の巻下の巻2回分と同額です。参考までに宝塚を調べると本公演でSS席1万2500円です。ちなみに私が観たことがある1本で最大金額は中島みゆきが赤坂ACTシアターでやった夜会の2万円です。価格は需要と供給ですから、売れると踏めば高くつけること自体に反対はありません。ただ、興行には相場というものがあるので、この公演が通常興行とは違う位置づけにある、ということはわかるはずです。サロン向けの価格です。

新橋演舞場は松竹の管轄だから、こんな公演を許して、ここまで干してきた松竹も新型コロナウィルスで背に腹は代えられなくなったのかと最初は思いました。が、チラシをよく見ると「主催・制作 新作歌舞伎『プペル』実行委員会」とありました。劇場は貸してもあとは知らんということでしょう。正しいです。表の商売として危ない筋との付合いは無くすのが世間の流れで、ここまで松竹が海老蔵を干してきたことにも納得しました。

歌舞伎にそこまでのめり込んでいるわけではありませんが、こんな付合いにめげずに堀越勸玄市川ぼたんがまともに育つことを願ってやみません。

2021年9月 2日 (木)

2021年9月10月のメモ

いつもだと入れるものを外したり、入れないものを残したり、かなり雑にまとめました。

・松竹制作「東海道四谷怪談」2021/09/02-09/27@歌舞伎座:第三部で仁左衛門玉三郎がこんな有名演目なのになあ

・神奈川芸術劇場企画製作「近松心中物語」2021/09/04-09/20@神奈川芸術劇場ホール:せっかくの大型企画がこの時期に

・劇団青年座「ズベズダ」2021/09/10-09/20@シアタートラム:何となくよさそうな野木萌葱の何となく史劇モノ

・劇団☆新感線「狐晴明九尾狩」2021/09/17-10/17@赤坂ACTシアター:吉岡里帆に舞台でも狐の格好をさせたかったんだろうなこのミーハースケベそれでこそ新感線、とタイトルと出演者だけ見て根拠なく断言します

・こまつ座「雨」2021/09/18-09/26@世田谷パブリックシアター、2021/10/02@関内ホール大ホール:脚本が面白いらしいけど

・パルコプロデュース「ジュリアス・シーザー」2021/10/10-10/31@PARCO劇場:オールメールは蜷川幸雄がよく使っていた企画ですけど今回はオールフィーメールで吉田羊を主演に森新太郎演出で

・unrato「楽屋」2021/10/16-10/24@赤坂RED/THEATER:余裕があれば観に行きたくなるような上演が多いですねこの団体は

・iaku「フタマツヅキ」2021/10/28-11/07@シアタートラム:すこしずつ上演劇場が広くなっています

・パルコプロデュース「ザ・ドクター」2021/10/30-10/31@さいたま芸術劇場大ホール、2021/11/04-11/28@PARCO劇場:あらすじを読んだだけで大竹しのぶ無双が観られると根拠なく断言します

他にシーエイティプロデュース企画製作「検察側の証人」2021/08/28-09/12@世田谷パブリックシアタ―、ホリプロ企画制作「ムサシ」2021/09/02-09/26@Bumkamuarシアターコクーンが繰越し。

本多劇場グループのホームページが整理されて見やすくなっていました。そして上演数はいつも通りですが、いつもだと見かける中堅グループをほとんど見かけませんでした。大手劇場よりこういう規模の劇場により影響は強めに表れています。

2021年9月 1日 (水)

単発の新型コロナウィルス対策横紙破りイベントに冷静に振舞う県知事の話

今回は音楽イベントの話ですけど、メモ。理由は後に載せます。キャリコネニュース「野外フェスに激怒した大村知事が、それでも『音楽フェスは原則やめて』と言わない理由」より。

参加者が「密」になっている状態がネットで報告され、大炎上している音楽フェス「NAMIMONOGATARI」。開催場所となった愛知県の大村秀章知事が8月30日に記者会見で抗議し、

「こういうことであれば、『これが最後。終わり』ということになります。今後、やってもらっちゃ困る」

と、同イベントに二度と県内の行政関連施設を利用させない意向を表明した。

大村知事は、フェスの開催場所が海岸だということをふまえ、「(ある程度大きな海岸は)公共のスペースになると思いますが、それはもうお貸ししません。県管理だけじゃなくて、市町村にもやめてもらいます。こういう方は信用できませんので。この事業者の海浜コンサートはやめていただくということであります」と語気を強めた。

フェスが終わった29日夜、「ネットを見ていて、なんじゃこりゃと思った」と打ち明けた大村知事。イベント開催について、県の担当部局からは事前に知らされていなかったという。

大村知事は「ネット等での投稿画像によれば、ステージ前では適切なソーシャルディスタンスは、どうも確保できていなかったのではないかと疑われる。お酒についても、発注キャンセルできるものはキャンセルしたが、一部提供があったもようだ」と、県側の現状認識を説明した。

県によると、フェスの会場となったのは、愛知国際会議展示場株式会社が運営権(15年間)を買いとって運営している「中部国際空港島のアイチスカイエキスポ」。県は8月に入ってからも、同社や主催者と折衝を繰り返し、8月12日、24日、26日、27日と4回にわたって感染防止策の徹底を呼びかけていたという。
(中略)
それなのに、今回の事態となった。SNS上で動画・写真で会場の「密」状態が拡散され、県は酒類の提供があったことを確認したという。

大村知事は何度も首をかしげるなど、不快感をあらわにしながら、「こういう形の、横紙破りのようなことをやられると、一生懸命、真面目に取り組んでおられる方々の足を引っ張る形になりますし、我々としても極めて遺憾だということであります」と述べた。

一方で、記者から「音楽フェスは、原則やめてというメッセージは出さないのか?」と問われると、大村知事は「それは違う」として、次のように理由を述べた。

「それをやると、真面目に一生懸命、感染防止対策をやって、音楽業界・関係のみなさんの仕事も一生懸命支えたい、両立させてやっていきたいという人を、潰しちゃうことになりますよね。叩いちゃうことになりますよね。それは、私は違うのではないかと思います。こういう約束を守っていただけない方のために、一生懸命守っている方が被害を受ける、迷惑を被るということは、これは違うと思います」

「極端な話、もう日本には音楽、コンサートといった文化・芸術・アーティストは要らないと、なくていいというのであれば別ですが、そんなことは誰も思っていない。どうやって両立していくのかということですよね。ですから、感染防止対策をしっかりしたうえで、厳しい状況を乗り越えていこうと申し上げたい」

「そういう中で、『自分の会社さえ儲かりゃいいんだ』『そんなの、知ったことか』と『県にはこう言っておくけど、実際の客がどうするかは知らんわ、そんなもん』という行動を取られた方は、極めて遺憾だ」

大村知事は「事実関係をさらに確認したうえで、厳正に対処したいと思っております」と述べていた。

なおこの後も主催者に嘘ついているんじゃねえよとTwitterも使って詰めています

この大村県知事、表現の不自由展で始めて名前を知りました。その時に、名古屋市長たちを「憲法違反の疑いが濃厚と思う」「行政や役所など公的セクターこそ表現の自由を守らなければいけないのではないか。自分の気に入らない表現でも、表現は表現として受け入れるべきだ」と表明していたからです。ずいぶん是々非々を通す人だと印象に残っていました。今回も業界全体と馬鹿な主催者とを混同してはいけないと明言しています。政治手腕についてはまったく知りませんが、芸術芸能の表現業界に興味がある人たちは名前を憶えておいたほうがいいです。

ちなみに本件の他にも、直前にフジロックで同様の騒動がありました。私の感想は以下のTweetが代弁しています。「ダサい」と思われてしまうことがどれほど手痛い失態かは、表現の業界に限らず、あらゆる商売で気を付けるべき心構えです。

はると@tonkatsudesu
「あぁ、あの人が斜に構えてるのは、考えがあってのことだったり、世を儚んでやってるのか」

と思ってたものが

「なんだ、単純に"ちゃんとしてない人"だったんだ」
と判明したときのダサさがあるな、今回のHIPHOP界隈やら、Gotchやらのフジロック勢を見てて思うのは。
午後3:02 ・ 2021年8月30日

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