緊急口コミプッシュ:ヨーロッパ企画「来てけつかるべき新世界」本多劇場
短いですけど感想はこちら。東京公演も残っているしここから全国ツアーなので、お見逃し無いように。
短いですけど感想はこちら。東京公演も残っているしここから全国ツアーなので、お見逃し無いように。
<2024年9月28日(土)夜>
大阪は新世界の片隅の外れにある串揚げ屋。母が亡くなってから引きこもって飲んだくれる父に代わって娘が切盛りする店には、近所のうだつのあがらないおっさんたちが常連客としてやって来る。だが世の中は進む。ドローン技術やロボット技術、AI技術が進み、その波は新世界の片隅の外れにある串揚げ屋にも確実にやって来た。
岸田國士戯曲賞受賞作の再演。技術の進歩を縦軸に、その技術を活用したり翻弄したり受入れたり受入れなかったりする人間模様を横軸に、だけどあくまで新世界の片隅の外れを舞台に庶民の立場で描く舞台。技術に翻弄されてもひるまず、きれいばかりではない駄目人間も馬鹿にせず、技術ネタからこてこてのネタまで笑いをこれでもかと詰込んでダレることなく2時間強を走り抜けた1本。誇張抜きで過去一番笑った芝居だったかもしれない。
はまり役ばかりの役者陣では、主人公の娘を演じて今が見ごろの藤谷理子、憎めない役を精度高く演じたトラやんの永野宗典とラーメン香港の中川晴樹を挙げておく。歌姫の町田マリーと散髪屋の岡田義徳とキンジの金丸慎太郎のゲスト組はもう少し観てみたかったけど文句なし。というか文句をつけるところなし。
技術と人間の関わり方は今ならどんぴしゃま話題なので、全国ツアーをやっているけど海外ツアーを組まれるべきだった。超ローカルにして超グローバルな芝居。岸田國士戯曲賞も納得の、文句なしの傑作。
<2024年9月28日(土)昼>
街から離れた砂漠のどこかにある移動式簡易宿泊所。やって来たのは病人を治して稼ごうとする医者と看護婦、それに亡くなる人に祈りを捧げて稼ごうとする神父。買出しに出かけていた宿の人も戻ってきて険悪な雰囲気になりかけたところに、遍歴する二組の騎士と従者がやってくる。どうにも話がまとまらない中、水を飲んだ看護婦の体調がおかしくなり・・・。
初日。ナンセンスな出だしからは思いつかないくらい殺伐とした話に進むのも不条理と言うべきか。遍歴する二人の騎士である山路和弘と山本龍二の掛合いが始まるあたりからが本調子になってくる演出。この年齢までやってきた二人だからこその凄みととぼけた感じを両立させるやり取りが見どころ。山路和弘が適当にアドリブをかまして周りの役者を笑わせていたけど、それより初日で比べるなら山本龍二を推したい。周りの役者もいい感じではあったけど、脚本にいろいろあった小ネタは流したのか上滑りして流されたか、できればそこでも笑いを取りたい。音楽に生演奏を入れることで雰囲気のライブ感がより高まる仕組みもいい感じ。年齢高い人の方が楽しめるかもしれない。初の別役実作品としてなかなかいい芝居を観られたので満足。
<2024年9月21日(土)夜>
戦中の日本、とある地方で行なわれている裁判。被告は父親殺しを疑われている花火師。起訴したのは地元の検察官、弁護するのは東京から来た弁護士。検察官が被害に遭った番頭たちを証人に出して被告の当夜の行動を示せば、弁護士は花火師の2人の弟を証人に立てて父親の酷さと兄の無実を申し立てる。空襲警報で何度も裁判が中断しながらも、他にも証人が入り乱れて、花火師と父親のこれまでの関係と当夜の出来事が少しずつ明らかになっていく。
前情報は入れないように注意して、大阪まで出掛けてきました。それは後で書くとして、カラマーゾフの兄弟を下敷きにしたという野田地図の新作。カラマーゾフの兄弟は未読なのでそちらとの比較はできませんので後からWikipediaで粗筋だけ確かめましたが、見所はありつつも大阪まで遠征させるものではないぞという出来。以下結末まで含めたネタバレです。
3人の兄弟が上から花火師、物理学者、牧師を目指してそうなったとオープニングで話されますが、スレた観客としてはここで「花火に物理学者なら爆弾?」と気が付いて、火薬を探す花火師に絡んで早い段階でウランという言葉が出てきたので、それで牧師なら教会で原爆で「パンドラの鐘」のリメイクか、と身構えながら観ることになりました。長崎の地名を出すのはだいぶ後まで引張ったのに、どうしてあんな早い段階でウランと明かしてしまったのか理解に苦しみます。後半、父親と花火師とで取合った女性としてグルーシェンカが出てきますから、それでしばらく引張ればよかったのに。
もっとも、E=mc^2もかなり前倒しで話していました。その物理学者の弟が原爆研究に携わり、その起爆に花火師の兄の腕前を云々というところは「東京原子核クラブ」を思い出させるような設定です。
牧師を目指した三男はどうもぱっとしないというか、話に絡むのが薄い。もちろんヨハネの黙示録の夢を見て原爆の投下を暗示するとか、兄が数式を話す手伝いをするとかあったのですが、都合よく話を進めるための役どころかと観終わったときには感じました。
で、観終わったところで思い返して、やっぱり「パンドラの鐘」だったと考えました。原爆投下の話にアメリカ人パイロットの会話を挟んだり、ラストが焦土になったりして、原爆を落とすなんてアメリカ人はとんでもねえよなと思わせる展開でした。だから一瞬、パンドラの鐘から20年経って還暦を過ぎて、野田秀樹も転向したのかと驚きました。
ただし竹槍で飛行機を落とす訓練をする場面を挟んだり、兄が戦死した電報を配る配達人を挟んだり、いまいちすっきりしないラストの長台詞だったりを考えると、あれはやっぱり、負け戦になっただけでなく焼け野原を引起した天皇の責任を訴える芝居だったのかと考えました。ここまでは観終わってホテルに戻って考えたところです。
その後、家に戻ってこの感想を書くためにカラマーゾフの兄弟の粗筋をWikipediaで読みました。割と芝居は原作の設定に則っているようで、次男が無神論者なことに加えて、三男の仕える牧師が亡くなって死体の臭いがきついから神への疑念を抱くところも原作にありました。神などいない、つまり現人神などいないに掛けていますよね。やっぱり「パンドラの鐘」だったと強く確信した次第です。ただの反戦ではないですよね。天皇を描かないようにしながら天皇の責任を問うためにカラマーゾフの兄弟を借景にした芝居だったと理解しました。
おかげで遠征させるものではないぞと考えた理由も整理できました。大きなところでは脚本が理由です。もともと難解なカラマーゾフの兄弟に寄せすぎて、野田秀樹の芝居の特徴である遊びが絡ませつつ、しかも天皇を描かずに戦争責任を問う(問うように誘導する)展開がかなり挑戦的です。予想では、カラマーゾフの兄弟を深く読んでいた人ほど脳内で補完して驚けたのではないかと思います。が、題名しか知らない自分にそれは無理でした。むしろ野田秀樹の過去作をそれなりに観た経験が邪魔をしたかもしれません。脚本で細かいところを言えば、途中で無理して韻を踏むような台詞を入れていましたが、あれは日本語の通じない外国人対策でしょうか。軽く飛んでいくような台詞が魅力の野田秀樹なのに、べったり重たく感じていまいちでした。
そして、3人兄弟が出てくるなら協力するにしても対立するにしてももっと互いが絡む要素を入れておくべきでした。特に長男の花火師が弟2人とあまり絡まないため、ラストの長台詞が活きない。序盤のあれだけでは足りない。いや違うか、弟に限らず長男が絡む他の役が少ないから、普段の生活感を感じられず、ラストの長台詞を語らせるのに向かなかったのですね。ここはカラマーゾフの兄弟に引張られすぎて野田秀樹が怠ったのではないかと想像します。
この3人兄弟ですが、悪くはなくとも良くもない。主人公となる長男の花火師を演じた松本潤は身のこなしがさすがでしたが、役に動きが感じられない。そういう脚本だと言えばその通りですし、どっしりとした存在感と言えばどっしりとしていましたが、主人公には前のめりな姿勢が求められるのが野田秀樹の芝居です。どうにもならないラストに向かって疾走して、力技でラストの長台詞を料理してほしかった。それは次男の物理学者の永山瑛太も同じで、後半のあるところから原爆の開発を目指すことが明確になって、兄に仕事を頼んで巻込むことになるのだから、そこからは悩みつつも危ういところへまっしぐらな様子を見せてほしかった。
そんな中で三男役を演じた長澤まさみが何とも不思議な印象で、野田地図2回目かな? 出番は少ないながらも声が耳を惹く。後半、早替えでグルーシェンカとの2役になったら遠目にもスタイルのいい姉ちゃんで、誰だこの役者と一瞬わかりませんでした。なんというか、助平心とは別の健康美のような華で気を惹かれました。それも助平心だろうと言われればその通りですが、「紫式部ダイアリー」よりは圧倒的によくて、カンパニーに馴染んでいました。ただし馴染んだだけでは駄目なのが野田地図で、そこにもうひと工夫がほしかった。2役どちらとも遊ぶ余地があった役のはずですが、役を役通りにこなして終わってしまいました。
圧倒的によかったのが脇だったはずの池谷のぶえで、ウワサスキー夫人というふざけた役名が体現するべきおふざけを完璧以上にやってのけました。声と言い仕草といいとぼけぶりといい、それでいて締めないといけないところもその延長でやってのけて、そうそうこれこそ野田秀樹芝居だよと出番のたびに考えました。あとは竹中直人も検察官と父親の2役ですが、どちらも渋い出来でいい感じでした。役者野田秀樹はいつも通りですが、村岡希美と小松和重が上手いだけで終わってしまったのがもったいない。もう少し遊べたところを上演時間の都合と外国公演向けに整理されたのかもと妄想します。字幕翻訳の都合でアドリブに近い言葉遊びネタが出来なくなるのだとしたらもったいないですね。そうなると池谷のぶえのやり方が正解になる。
あとはコロス。近頃の野田地図はコロスが美しくて、遠目にもよくできていたというか、遠目のほうが楽しめます。絵作りが上手ですよね。井出茂太を振付に呼んでいるだけのことはありますが、台詞も一部持たされてよく全うしていました。スタッフは今さらですが、ひびのこずえの衣装を挙げておきます。
だから総評は、脚本が無理な挑戦をして乗越えられなかったところを役者でカバーしたかったけれど、主役3兄弟がお呼ばれ感のあるお行儀のよさで天井を破れず、脇は脇で海外公演の都合で字幕をいじるような遊びを封じられて、それでも活路を見出した池谷のぶえの圧倒的技巧と、それに匹敵する長澤まさみの華と、それだけ無理をしてもなお形になったカラマーゾフの兄弟原作の骨格で何とか繋いでみせた仕上がり、でした。観てよかったかと聞かれればよかったと答えますが、遠征した甲斐がありましたかと聞かれれば私にとっては微妙でした。
そもそも東京公演、いつも通り舐めていたせいで前売りを買えずに当日券狙いになったのですが、4日間6公演でくじ引きに挑んで6回返り討ちに遭いました。うち3回が1番違いで、特に3回目の1番違いを引いた最後は、もう東京公演は諦めろという当日券の神様の啓示が降りてきましたね。お前以外にどれだけ当日券に祈りをささげる者がいるのか考えたことがあるのかと声が聞こえました。神はいます。いますけど、当日券の神様に座席は作れない。ただ差配するのみです。
ちなみに今回の当日券、東京公演がリストバンドによる抽選、北九州公演がオンラインによる先着、大阪公演がオンラインによる抽選でした。このあたりはスタッフの都合によるものか、いろいろな販売方法を試して次回に活かすつもりなのか、わかりません。東京公演では番号発表と自分の番号から察するに、毎回だいたい15倍から20倍くらいの倍率だったと推測します。リセール狙いは最後までやっていましたが、全滅しました。
ぼろ負けして発想を切替えられたので、大阪公演の予約が始まるところに間に合って何とか確保できました。前後左右全員双眼鏡持ちという座席でした。いい劇場なので見切れはありませんでしたが、遠いものは遠い。おかげで芝居から距離を置いて眺められたのはあったかもしれません。
それにしても純粋な遠征目的の旅行は人生2度目でしたが、宿の予約を舐めていたら高い宿になるし、昼間は観光で大阪を歩いてみようとうっかり歩いたら疲れて死にそうになって芝居の前に宿でひと休みしたりで、偉い目に遭いました。歩いたのは自分の物好きなのでさておき、東京に芝居を観に遠征してくる人たちはチケットが取れた瞬間に宿の予約に手が動いたり、持っていく荷物や格好も決まっていたり、このあたりはもうルーチンになっているんでしょうか。翌日の午後は早めに引揚げたつもりですが、家に戻ってから後片付けに追われるわ次の日に起きてもまだ足が痛いわで、遠征不慣れなばかりにへろへろになってしまいました。予定を組むのが嫌いなので割と行き当たりばったりで直前に決めるのですが、そういうことをやりたければ身体を鍛えるところから始めないといけないと思い知らされる遠征でした。
<2024年9月16日(月)昼>
老いて国を三人の娘に分け与えようとする王。長女と次女の追従に喜ぶが、言葉を飾らず感謝を述べる三女に激怒して勘当してしまう。三女に与えるつもりだった領地も長女と次女に与えて自分は月替わりで世話になるつもりだったが、父親の癇癪ぶりを目の当たりにした長女と次女は一計を案じる。その裏で、王の家来である伯爵の私生児である息子が、後継ぎの座を狙って姉を追落としにかかる。
初日。見慣れたせいか自分が歳をとったのか、それとも翻訳がこなれているのか、特に翻案はしていないはずなのに日本語のシェイクスピアもここまで来たかというくらい明瞭な上演。リア王の木場勝己はここからさらに先を期待できる出来。ケント伯爵の石母田史朗、グロスター伯爵の伊原剛志、次女の森尾舞、コーンウォール侯爵の新川將人が快調。兄ならぬ姉になったエドガーの土井ケイトは場面によって良し悪しの幅が大きいからがんばれ、二役の原田真絢は道化はいいから三女をがんばれ、長女の水夏希はもっとがんばれ、エドマンドの章平とオズワルドの塚本幸男とオールバニ侯爵の二反田雅澄はいいけどもっといける、が初日寸評。スタッフはどれもいいけど和風の歌を歌わせた宮川彬良に一票。なぜか似合っていたし、あれを道化に歌わせることで芝居の調子が決まった感がある。雨だけ客席も巻込むつもりでもっと大袈裟にやってもよかった。
今回は配役でも訴える演出。三女と道化を同じ役者が二役兼ねることで追放した三女に道連れで助けられるというメタなところが出たし、グロスター伯爵も疑って追手を掛けた娘に助けられるというリア王と同じ境遇が造れた。あとはコロスにあたる兵士にきっちり演技をさせるところもよかった。あれをやればこそ、伝令を伝えるにしても止めに入るにしても、場面が生きる。行届いた演出。
客席削っているから距離は近くで観られるけど、舞台の間口は削らずに客席が横に長いから、前の端席だと首が痛くなる。当日券を狙うなら後ろでも中央寄りをお勧め。あれは客席の組み方をもう少し工夫してほしかった。
なお、芝居を観終わってこの感想を書こうとしたらちょうど社長が娘に刺されたという事件が目に入ってきました。何と普遍的な芝居だと感に入っているところです。
<2024年9月15日(日)昼>
将軍家から拝領の脇差を盗まれたためにお家断絶して吉原に沈んだ妹の厄介になりながら悪事を働くお坊吉三、旅回りの役者上がりで娘のふりをして盗みを働くお嬢吉三、これが盗んだ百両を巡って寄越せ寄越さないと揉めたところを仲裁した和尚吉三。義兄弟の契りを結んだ三人だが、この百両を巡って三人に縁のある人間の運命が動き出す。
初日。歌舞伎の台詞も節回しを止めて話してみれば実に明瞭。よくぞこれだけ色々な役者を揃えたもので、初日にして仕上がり十分。目を惹いたのはお坊吉三の須賀健太と吉野の高山のえみ。特に須賀健太はこの役のためによくぞ見つけてきたなの一言。出来のよさなら伝吉の川平慈英が文句なしの一番で、和尚吉三の田中俊介が後半尻上がりに調子を上げていく。そのままやったら役に負けるところ役を手中に入れた文里の眞島秀和とおしづの緒川たまき。おいしい役を楽しそうにやった武兵衛の田中佑弥と金貸太郎右衛門の武居卓。役に徹して控えめにやって見せた武谷公雄と山口航太と緑川史絵。スタッフは和洋ごちゃ混ぜの衣装がことによし、音楽は一幕が薄い割に後ろが濃いのはバランス調整の余地あり、が初日寸評。
一度観るにはいい座組みですけど、当日券は余裕あるも、上演時間が休憩2回挟んで5時間20分なのは覚悟してください。今思えばコクーン歌舞伎の3時間40分は素晴らしかった。地獄の場が初演以来カットされてきたのももっともで、あそこを切って休憩1回減らせば30分以上縮まりますよね。せめて4時間半に収まってくれれば他の芝居の夜の部に当日券狙いで駆けつけられたものを。それでもやるなら、長引くからと自虐するよりもっと笑わせに来いや、と言いたくなる。あの場面だけが瑕疵。
詳細後日、は書かなくてもいいかな。
<2024年9月14日(土)夜>
大正時代の新潟。産科の荻野は不妊や多産に悩む患者を診察しながら、女性の排卵日を知るための研究を続けている。その産科には堕胎をよろこばないカトリックの助手や、女性解放運動に賛同する看護婦が働く。そんな荻野のところに結婚話が上がり、結婚するなら自分の研究に協力してほしいといきなり相手に申し入れてしまう。
オギノ式で知られる荻野久作がそれを見つけるまでの苦闘を縦軸に、それにまつわる様々な立場の登場人物を上手に配置して横軸に、初演1994年とはまったく思えない脚本は何度も上演されることがよくわかる。その脚本を小劇場らしさを上手に生かした手つきで演出して役者も好演。ここで一度観ておくかと選んだ判断は正しかった。面白かったです。上演期間が短いですけど未見の人は当日券狙いもいかが。
<2024年9月17日(火)追記>
詳細後日で書こうとしましたけど止めておきます。
<2024年9月14日(土)昼>
昭和15年の日本。大会社の社長の息子と娘が婚約して、娘の家で娘の家族が祝いの酒を飲んでいるところに警部が訪ねてくる。病院に運び込まれて自殺した女性について話を聴きたいという。めでたい夜だがそれなら仕方ないと招き入れるが、警部は慇懃無礼とも言える態度で順々に質問を始める。
イギリスの脚本を日本に置きかえてまったく違和感のない出来。ミステリー風でもいまとなっては素直な脚本の部類に入るが、それでもよくできているし役者も好演。やや説教が前面に出てくるも面白かったです。
<2024年9月17日(火)追記>
詳細後日で書こうとしましたけど止めておきます。
9月がお腹いっぱいですが10月も含めて必見の芝居が多すぎます。
・国立劇場主催「夏祭浪花鑑」2024/09/01-09/25@新国立劇場中劇場:通しではありませんけどチケット代も含めて気楽に夏祭浪花鑑を観られそう
・Bunkamura企画製作「A Number / What If If Only」2024/09/10-09/29@世田谷パブリックシアター:翻訳物2人芝居とほぼ2人芝居を1ステージで2本まとめて上演、役者がよい
・ロデオ★座★ヘヴン「法王庁の避妊法」2024/09/11-09/16@「劇」小劇場:この演目は1度観たいと思いつつ見逃しているので
・劇団俳優座「夜の来訪者」2024/09/12-09/15@俳優座劇場:何度も上演されているから観たいなあと
・劇団しゃれこうべ「8人の女」2024/09/13-09/16@シアター風姿花伝:フランスの面白そうな翻訳物ミステリーなのでピックアップ
・劇壇ガルバ「ミネムラさん」2024/09/13-09/23@新宿シアタートップス:そろそろ観ておきたい山崎一主催の芝居は峯村リエを招いて意味ありげな題名
・木ノ下歌舞伎「三人吉三廓初買」2024/09/15-09/29@東京芸術劇場プレイハウス:演出杉原邦生で上演時間5時間らしいです
・神奈川芸術劇場主催企画制作「リア王の悲劇」2024/09/16-10/03@神奈川芸術劇場ホール内特設会場:木場勝己がリア王で他にも気になる役者を揃えて藤田俊太郎の演出で
・シアター・コントロニカ「並行食堂」2024/09/18-09/29@神奈川芸術劇場大スタジオ:小林賢太郎のコント公演です
・円盤に乗る派「仮想的な失調」2024/09/19-09/22@東京芸術劇場シアターウエスト:チラシが不気味だけどなんとなくピックアップ
・ヨーロッパ企画「来てけつかるべき新世界」2024/09/19-10/06@本多劇場:岸田國士戯曲賞受賞作の再演
・劇団俳優座「セチュアンの善人」2024/09/20-09/28@俳優座劇場:俳優座と桐朋学園芸術短期大学の合同で田中壮太郎が演出だけど割と期待できるのではないかと根拠のない予感
・劇団青年座「諸国を遍歴する二人の騎士の物語」2024/09/28-10/06@吉祥寺シアター:別役実を観るならあれではないかこれではないかと言い続けています
・劇団昴公演「広い世界のほとりに」2024/10/02-10/06@あうるすぽっと:イギリス翻訳物をなんとなくピックアップ
・松竹製作「錦秋十月大歌舞伎」2024/10/02-10/26@歌舞伎座:午後に仁左衛門玉三郎の「婦系図」と玉三郎染五郎の「源氏物語」
・THE ROB CARLTON「THE STUBBORNS」2024/10/04-10/14@三鷹市芸術文化センター星のホール:代表が胡散臭い顔をした団体は久しぶりです
・新国立劇場主催「ピローマン」2024/10/08-10/27(2024/10/03-10/04プレビュー公演)@新国立劇場小劇場:これは観ないといけないけどプレビュー公演で土日を空けるとか三連休で昼公演のみとか日程が贅沢すぎて、せめて三連休の夜は追加公演のために空けてあると信じたい
・こまつ座「芭蕉通夜舟」2024/10/14-10/26@紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA:内野聖陽のほぼ一人芝居を鵜山仁演出で
・世田谷パブリックシアター企画制作「セツアンの善人」2024/10/16-11/4@世田谷パブリックシアター:こちらは白井晃演出の別公演だけど1度は観ておきたい演目
・狂言ござる乃座「70th Anniversary」2024/10/19、10/24@国立能楽堂:野村萬斎の釣狐よりは野村万作を観られる機会
・M&Oplaysプロデュース「峠の我が家」2024/10/25-11/17@本多劇場:岩松了の新作は役者もなかなか
・入江雅人グレート二人芝居「演劇部のキャリー」2024/10/31-11/04@劇場HOPE:面白かった芝居を今回は脚本家本人と桑原裕子の2人で
当日券派だった自分が近頃はいっちょ前に予約することもあるんですけど、それでチケットパズルが上手くいかなくて見逃したこともよくあるので、ここは演目を見定めたいところです。
<2024年8月14日(水)夜>
映画で人気のスター俳優が結婚間もない仕事として舞台の「ハムレット」に挑む。その演出家にはかつて共演したことがあり、自身も「ハムレット」を含むシェイクスピア作品に主演して絶賛されていた年長の男性をイギリスから指名する。だがスター俳優が主導するはずだった芝居が、役作りの困難から演出家と、やがてプロダクション全体との衝突につながる。演出家は他のメンバーから解決を求められるが、芝居に対するスタンスの違いを埋められずに適切な対策が取れず、追込まれていく。
てっきりよくできた作り話のつもりでしたけど、休憩明けの脚本家と演出家のインタビューで実際にあった話に基づいて作られた話だと知りました。新婚のスターがリチャード・バートンとエリザベス・テーラー、演出家がジョン・ギールグッドです。いやもう映画に詳しくなくてすいません。
そして話自体が非常によくできていました。演出家が主演俳優に悩まされて、誰もいなくなった稽古場で椅子を相手役に見立ててシェイクスピアの台詞のように悩みを吐露する前半最後の場面は、誰が観ても名場面という名場面でしょう。ただ個人的には、後半頭に俳優の妻に演出家が呼ばれて、あなたは芝居一族の御曹司、夫は炭鉱作業員の息子で父親に見捨てられて姉夫婦に育てられた正反対の人(大意)と伝えて食い違いを助ける場面や、俳優がホテルで台本片手に悪戦苦闘する場面も心惹かれました。
脚本の展開で稽古場の場面と他の場面、それをハムレットの台詞で滑らかにつないでいくあたり、どことなく日本の小劇場っぽいなと観ながら考えていたのですが、ようやく思いついた。マキノノゾミの舞台がこんな作りが多いですね。何が違うと言われても困るのですが、私のイメージする海外演劇は舞台転換も含めてリアリティ重視なので、それとはちょっと違った作りでした。
おまけで、題名にもなっている「ザ・モーティヴ&ザ・キュー」、いわゆる「動機ときっかけ」と訳されて目にしていた言葉のことが、前半最後の場面のおかげで少しだけわかりました。私は役作りのメソッドに「動機ときっかけ」が必須とは考えない、いろいろなやり方があるはずだしそれで構わないだろうと考える人ですが、現代的な芝居に仕上げようとすればするほど、プロダクション全体が統一されたメソッドで臨んだ方がいいのはわかります。それが劇団ごとの味だったころから、舞台界共通の手法になろうとしているのかなと思ったり思わなかったり。
上演終了間際に観たのですが、機会があったらもう1回観てみたいなと思わせる話でした。